研究概要 |
本研究は真水と海水との間に浸透膜を配置すると生ずる浸透圧を利用して水力発電システムが構築可能かどうかを実験室規模の装置で実験的に確かめることを目的としている。実験装置は市販の逆浸透膜モジュール(HA5110,東洋紡績製)を用いて構築した。その真水側に蒸留水を供給し、海水側には食塩水を供給した。食塩水はポンプによりモジュール内を強制的に流動させた。真水は浸透圧によって食塩水側に吸収される。蒸留水供給管路の一部にバルブを設け浸透膜に加わる圧力を変化させた。以上のシステムを用いて蒸留水流量、バルブ前後差圧および海水流量の測定を海水塩分濃度0,4,8,および12%について行った。 他方、浸透膜を液体が通過する際の膜前後差圧と流量の関係を理論的に考察し、次のような式を導いた。 Q=L_PF(ΔΠ-ΔP) (1) ここで、Qは真水流量、L_Pは膜透過係数、Fは膜面積、ΔΠは透過流量がゼロの場合の透過膜前後の圧力差(浸透圧)、ΔPは負荷である。L_PおよびFは選択した逆透過膜モジュールによって、ΔΠは塩分の濃度によって決定される値である。 ある差圧を与えた場合に実験的に計測された流量と式(1)より得られる流量との比較を行った。実験システムが大気圧基準で実験を行うように設計されているために、変化させ得るΔPの範囲は狭い値となったが両者は定性的な一致を見た。以上より、真水と海水の塩水濃度差による発電が可能であるとの結論を得た。
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