研究概要 |
流体の相変化現象を分子レベルで解明することを目的として,蒸気の凝縮速度および凝縮係数を測定する新しい実験技術を開発した。主な結果をまとめると以下のようになる。 1.理論解析結果 衝撃波管の低圧管管端表面で蒸気中を伝ぱする衝撃波が反射した際に,管端表面上に形成される液膜の成長過程を特異摂動法により理論解析して,液膜成長を記述する方程式を導出し,差分法による数値解析結果と比較してこの方程式の精度を明らかにした。また,液膜成長に関する遷移現象の存在を理論的に証明し,この現象を遷移時間を求めた。さらに,理論の適用限界についても考察を加えた。 2.衝撃波管による実験と分子動力学シミュレーションの結果 強い水素結合を有する会合性液体の一つであるメタノール蒸気を試料気体として,衝撃波管を用いた凝縮係数の測定に関する実験および分子動力学法による数値シミュレーションを行い,以下のことを明らかにした。 (1)メタノール蒸気の凝縮係数は0.17±0.01である。 (2)分子動力学法による理論計算値は0.2±0.1であり,上の実験値と良く一致している。 (3)メタノール蒸気の凝縮係数が1よりも十分小さい理由は,従来言われていたような蒸気分子の液面での反射によるものではなく,衝突分子が液体分子を追い出す粒子交換によるところが大きい。
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