研究概要 |
40nm程度の球状ミセルを形成するといわれている陰イオン系界面活性剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS,陰イオン系,分子量348)を用いて,管摩擦実験および放射状液膜流の遷移実験を行った。 内径2.63mmのステンレス管を用いて行った管摩擦実験では、20〜25ppm界面活性剤-水道水溶液において、臨海レイノルズ数が10%上昇するのが認められた。内径2.50mmの銅管の場合には臨界レイノルズ数が5%上昇するのが認められた。これらの結果は、界面活性剤添加は乱流遷移を抑制することを示している。 内径25mmの円管の先端と、管軸と垂直におかれた円板とで構成した円筒状の薄い隙間より、溶液を円板に沿わせて放射状に流出させて得られる放射状液膜流れの、乱流遷移点の半径位置および遷移が生じる臨界レイノルズ数を調べた。その結果、6〜40ppmの濃度において、遷移点の半径は5%、臨界レイノルズ数は10%増大することが確認された。これらの結果は、界面活性剤添加は遷移を抑制することを示している。なお、放射状液膜流れは自由表面を有しているので、界面活性剤添加による表面張力の減少が液膜流の遷移抑制にどの程度影響するかを調べるために、線形安定性理論により安定性に及ぼす表面張力の影響を解析した。その結果、実験範囲程度の表面張力減少は流れを高々1%安定化するに過ぎないことがわかった。従って、上述の実験で得られた5〜10%の遷移抑制は表面張力の減少に起因するものではなく、溶液内部のミセルの存在あるいは活性剤の壁面への吸着に起因するものと推察される。
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