本研究は複雑な高速噴霧拡散燃焼現象を普遍化する一つのアプローチとして、燃焼の相似性に着目し、燃焼経過、燃焼生成物、ならびに熱伝達に関するスケール効果について理論的ならびに実験的検討を試みたものである。 前年度の研究において燃焼の相似性とそれに基づいた燃焼生成物や部材温度の予測理論が概ね完成したので、今年度は実機における計測データを収集し、理論予測値の比較を行った。その結果、模型実験装置のデータから、実サイズ機関の排気や壁面温度を理論予測通りに推定可能であることが確認できた。またこれと平行して、噴霧中の空気導入特性に関する理論式の作成とその実験的検証を行い、噴霧燃焼現象を普遍化するための一理論式を提唱することができた。一方、定常拡散噴流火炎中の温度分布や渦構造の観察を行い、相似性を生じるメカニズムについて様々な視点から解析を行うことができた。 このほか、噴霧燃焼現象の可視化解析を目的としてこれまで進めてきた定容燃焼装置の試作を完成し、非定常噴霧火炎と非定常気体噴流火炎との構造比較を行った。今年度は単に火炎の外形形状と到達距離の比較に留まったが、両者に相似的な特徴が観察された。一方、こうした実験的な研究ではデータの収集と解析に限界があるので、KIVA-IIコードを用いた燃焼の3次元数値シミュレーションの準備と改良を前年度に引き続いて行った。その結果、本計算プログラムの計算精度に関する影響因子をある程度解析することができたが、燃焼をシミュレートするに足るレベルの計算を行うまでには至らなかった。 以上、平成7年度では研究計画にほぼ沿った成果を挙げられたが、燃焼の相似性の精度と適用限界、ならびにその発生メカニズムを明らかにして行くには、さらに多くの研究が今後必要であると言える。
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