本研究で取り上げた燃焼合成法は、金属と非金属または二種類以上の金属を直接反応させることにより、高融点無機化合物や金属間化合物を迅速かつ経済的に合成する材料合成法であり、燃焼波が元素混合粉末圧粉体中を自己伝播することにより、燃焼生成物として高融点無機化合物や金属間化合物が合成される点に特徴があり、しかも、元素間の発熱反応を利用するという点において、燃焼工学の研究対象となりうるのであるが、燃焼工学的観点からの研究は少ないのが現状である。本研究では、元素混合粉末圧粉体中を自己伝播する燃焼波(火炎)に着目し、火炎形成に必要な着火エネルギを実験的に求めるとともに、着火エネルギに及ぼす種々の要因(元素粉末の混合比、最終生成物による希釈、初期温度、元素粉末粒径など)の影響を明確にすることを目的として研究に着手した。研究においては、火炎形式に必要な着火エネルギを赤外線により試料上面に供給することを考え、赤外線加熱装置を補助金により購入するとともに、これを組み込んだ実験装置の設計・製作を行い、真空やアルゴン雰囲気内で、しかも熱流束や加熱面積を変えて実験が行えるようになった。本格的な実験は次年度に予定しているが、予備的実験により、最大10GW/m^2の熱流束の供給が可能であること、この熱流束ではチタニウム粉末(粒径25μm)と炭素粉末(5μm)の量論混合比圧粉体試料を1秒以内に着火せうることなどが判明した。 なお、次年度においては、元素粉末の混合比、最終生成物による希釈、初期温度、元素粉末粒径など変化させつつ、火炎形式に必要な着火エネルギの測定を系統的に行う予定である。
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