研究概要 |
金属管保護の光ファイバケーブルは長年月の使用に耐えるため,海底ケーブル等に盛んに用いられるようになった.金属管保護の光ファイバの製造法に関しては,金属曲面板で光ファイバを包み,それを管状に曲げて溶接により管内にファイバを挿入する方法がすでに実用化されている.しかし,この方法では,溶接による熱の影響で光ファイバを痛めることがあることと,継ぎ目からの管の劣化が避けられない. 本研究は金属細管に光ファイバを振動により挿入する技術を開発したものである.本方法を用いた場合,振動条件によってはまったく挿入できないことがある.そこで本研究では,まず振動する空間曲線管内の線状弾性体の強制振動に対する動力学モデルを確立し,反復法を用いた解析法を提案し,そのシミュレーションを行った.その結果,管内の光ファイバの挙動は準周期運動であり,ファイバ前部からの距離が増大するにつれて張力またはファイバに発生する波の波長が増大し,振動挿入が可能な振動数と振幅の範囲が極めて狭い,すなわちこれらの値を慎重に選択しなければ振動挿入が不可能となることがわかった.また本方法でしばしば発生する管詰まりの原因はファイバの横方向の運動の不安定性,非定常な張力の減少などに起因し,その現象はファイバの挿入部に発生することが明らかにされた.一方管の軸方向および回転方向の間の位相差もファイバの挿入速度に大きく影響することを示し,効果的な位相の与え方を示した.さらに本方法の妥当性を検証するため実験を行った.実験値と理論値は良く一致し,最終的に0.5mm内径の細管に2km(直径3mm)の長さの光ファイバを挿入することに成功した.
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