金属間化合物/半導体ヘテロ構造の分子線エピタキシ-成長とその電子物性

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06805029
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 田中 雅明 東京大学, 工学部, 助教授 (30192636)
• 研究分担者: 西永 頌 東京大学, 工学部, 教授 (10023128)
• キーワード: 金属間化合物 / CoAl / 分子線エピタキシ- / MBE / ヘテロ構造

研究概要

平成6年度は、分子線エピタキシ-(MBE)法による金属間化合物/半導体ヘテロ構造の形成技術の確立をめざし、以下の研究を行った。
(1)金属間化合物(CoAl)/半導体(GaAs/AlAs)ヘテロ構造の形成
まず金属として、高温においても熱的安定性がありAlAs/GaAsとの相互拡散や反応がなく熱力学的に安定な界面を形成することのできるCoAlを選び、CoAl/AlAsの金属/半導体ヘテロ構造をMBE法によって作製する。CoAlは塩化セシウム(CsCl)型の結晶構造を持っており、閃亜鉛鉱型のAlAsやGaAsとのエピタキシャル成長における整合性がよい。基板としてGaAsを用いGaAs/AlAs/CoAl/AlAs/GaAsのダブルヘテロ構造を形成する。MBE成長においては、高融点金属であるCoの分子線もクヌードセンセルを加熱して得ることで、CoAlの組成と膜厚の原子レベルでの制御性を達成した。これによって、厚さ20原子層程度のエピタキシャル金属超薄膜を半導体中に作製することに成功した。
(2)CoAl/AlAs/GaAs埋め込みヘテロ構造の構造評価-in situな観察とex situな評価
MBEに付属している反射高エネルギー電子線回折(RHEED)装置を用いて成長中のその場(in situ)観察を行い、表面のラフネスや結晶配位等も含め、半導体上の金属のエピタキシャル成長過程および、金属上の半導体のエピタキシャル成長過程を詳細に調べた。成長したAlAs/CoAl/AlAs埋め込みヘテロ構造をX線回折や透過型電子顕微鏡によって評価し、原子レベルで急峻な界面をもつ金属/半導体ヘテロ構造が形成されており、結晶性も良好であることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] M.Tanaka et al.: "Epitaxial CoAl/AlAs/GaAs Metal/Semiconductor Heterostructures:Growth,Structure and Electronic Proprties'." Journal of Applied Physics. 75. 885-896 (1994)
• [文献書誌] M.Tanaka et al.: "Magnetotransport Properties of Epitaxial Magnetic Superlattices of Mn-based Intermetallics on GaAs Heterostrucures'" Solid-State Electronics. 37. 1031-1036 (1994)
• [文献書誌] M.Tanaka et al.: "MBE Growth of MnAs Thin Films on GaAs" Journal of Vacuum Science & Technology. B12. 1091-1094 (1994)
• [文献書誌] M.Tanaka et al: ""Epitaxial Orientation and Magnetic Properties of MnAs Thin Films on (001) GaAs:Template Effects"" Applied Physics Letters. 65. 1964-1966 (1994)
• [文献書誌] M.Tanaka et al: ""Epitaxial Ferromagnetic MnAs Thin Films Grown by MBE on GaAs:Structure and Magnetic Properties"." Journal of Applied Physics. 76. 6278-6280 (1994)
• [文献書誌] 田中雅明(共著): "分子線エピタキシ-" 培風館, 350 (1994)