本研究で作製する超伝導トランジスタはエミッタ/ベース接合としては、すでに実績のあるNb/AlOx/Nbトンネル型ジョセフソン素子を使い、ベース/コレクタ接合としては超伝導体/半導体のヘテロ接合を使うのであるから、本研究の力点は(1)コレクタの半導体薄膜の堆積と(2)トランジスタ構造の作製とパタ-ニングに置いた。 (1)コレクタ用の半導体薄膜の堆積 金属超伝導体(Nb)のギャップ電圧は数mVであるからこれと組み合わせる半導体としては、狭いエネルギーギャップを持つInSbを考えた。このコレクタとするInSb薄膜はまずフラッシュ蒸着法により成膜した。この方法では加熱したタングステンヒーター上にInSbの粉を落下させ、粉のInSbが1:1の比のまま瞬間的に蒸発させ、基板加熱用のヒーターにより加熱した基板上に堆積させる。基板としてはSi、MgO、GaAsを使用し、特にGaAs基板を使用した場合、基板温度が400度の時組成比がほぼ1:1で表面の平坦性の良い薄膜を得ることに成功した。クヌードセンセルを使った共蒸着装置も作製し、InSb薄膜の堆積をおこなった。 (2)トランジスタ構造の作製とパタ-ニング このフラッシュ蒸着法および共蒸着装置とNb/AlOx/Nb素子製作用スパッタリング装置を真空トンネルで結ぶことにより、トランジスタの作製において多層積層構造、特に超伝導体薄膜と半導体薄膜の界面のショット-接合に不純物が入らないよう、堆積していくことが可能となった。トランジスタ構造のパタ-ニングにおいては、反応性イオンエッチング装置によるドライエッチング法と陽極酸化法を併用しておこなった。この結果エミッタ/ベース接合としてはジョセフソン素子の特性が得られ、またベース/コレクタ接合も非線形のものが得られた。
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