はじめに 覚醒レベルを客観的、定量的に把握することは学術的に意義深いばかりでなく、居眠りによる事故防止などに応用できる。本研究では、ねむけの他覚的指標として開眼状態をとりあげ、覚醒レベルとの相関関係を解析した。 実験方法 自動車運転を模擬したビデオ映像を被検者(健常男性5名)に見せ、被検者には運転をしているつもりで映像を見るように指示した。測定対象は開瞼度、瞬目回数、眼球運動、自己評価法によるねむけ度(KSS値)、脳波、心電図である。開瞼度測定には眼をビデオ撮影し、その画像を処理して眼裂幅を測定するシステムを試作し、応用した。実験時間は15〜20分を1セッションとし、5〜10分の休憩をはさんで4セッション行った。セッション毎の各測定対象の平均値とセッションの開始および終了時のKSS値の平均値を求めた。測定は深夜に行い、コントロールとして覚醒時の測定を昼間時に行なった。 結果と考察 開瞼度の変化を覚醒時の値を1としてみると、KSS値が4.7程度までは覚醒時とほとんど変わらないが、それ以上になると急激に減少し、5前後では覚醒時の約50%までになる例が3例にみられた。他の2例でも似た傾向にあった。これは開瞼度が強いねむけの指標となることを示すものである。瞬目回数については、KSS値の増大に伴い一時的に回数が増し、更にKSS値が増すと再び減少するケースと、KSS値が増すと覚醒時よりも回数が減るケースがあり、変化の様子は個人によりかなり差がみられた。眼球運動量はKSS値の増大と共に減少するが、KSS値が4程度では覚醒時の50%までに減少している例が全例中3例にみられ、軽・中度のねむけを反映しうるものと考えられた。しかし、KSS値が4.5程度でも覚醒時の約75%前後の例もあり、開瞼度に比較すると個人差がみられた。 今後は、更に例数を増して解析の精度をより上げることと、脳波や心拍数等の生理的指標との相関関係を明らかにすることが課題である。
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