本研究においては、従来トップダウン的になされ勝ちな建築構造・形態をより多様なものにするために、コンピュータの支援を前提として、人工生命理論の応用しボトムアップ的な自動形態形成が可能なシステムを構築した。本研究の特色は、評価による淘汰の段階でファジィネットワークによる知的評価システムを併用し、知命共創システムとして確立したことと、更に、知的生命体仮説による建築・都市創成への応用性についても示唆を得たことである。得られた主たる成果を以下に記す。 1.ファジィ理論、オブジェクト指向プログラミングなどの人工知能的手段を活用し、建築構造・形態の自律的評価や計画を行うインテリジェントファジィネットワークを構築した。 2.局所的なルールからマクロな建築構造・形態を出現する創発システムを構成し、上記の知的評価による遺伝的アルゴリズムの考えを応用した進化システムを構築した。 3.人工知能理論、ファジィ理論、人工生命理論を統合した知命共創システムを提案し、阪神大震災の教訓を生かしてイメージした知的生命都市を分析し、その創成に本システムが役立つことを、初歩的であるが事例と共に明らかにした。 本研究の真意は、建築家や構造設計家の仕事を奪うことではなく、人間の頭脳や生物の形態形成の原理を応用し、多様な構造形態を生み出すことによって、彼等の活動をより知的かつ創造的にすることにあり、その目的は達成された。
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