まず、雰囲気温感と身体温感を特定するための実験を実施した。被験者を、温感に関して「雰囲気温感」と「身体温感」を区別して判断させるように教示したグループと、全身温感のみを回答させるグループの二つのグループに分けて、室内冬服(標準服)と防寒服(+標準服)の二種類の着衣について、中立温感室(22℃、標準服)から低温室(18-12℃)に移動させ一時間滞在させ「温感」等を申告させる実験を実施した。その結果、雰囲気温感(「空気の冷たさ感」を回答させた)は気温の関数であり、全身温感の影響をほとんど受けないこと、またこの雰囲気温感が中立となる気温は22.6℃であることなどの特異が得られた。また、雰囲気温感は放射温度計で計測した額の温度の一次関数で表されることが確認された。このように、雰囲気温感と身体温感とは別個の温感であることが確認された。しかし同時に、これらの申告結果の経時変化に類似した傾向がみられ、両者の関連も示唆された。雰囲気温感を検知する人体部位を調べる実験では、頭部の露出部位の全体を覆ったとき以外は、空気の冷たさは検知され、特定部位の存在については確認できなかった。放射熱が偏在する環境や湿度・気流の影響、ならびに身体温度と雰囲気温感を統合した温熱環境評価の方法については、今後の課題として残された。次年度以降の継続課題として申請する予定である。
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