研究概要 |
肢体不自由者や高齢者に限らず人間の物的環境形成のための計画においては,その実態を観察し,問題を把握し,分析することが必要となる。特に肢体不自由者の場合は,健常者と異なり身体的にも,社会的にも,経済的にもその生活においてさまざまな問題を有しており,健常者を対象とする調査のように反復して実態を捉えることが困難であり,問題の把握についても数多くの身体障害者とその生活実態を観察することが必要である。また高齢者に関しては,生活環境をとりまく多様な機器具の利用状況など,物的環境における詳細な生活実態の調査は少なく本研究を進めるために独自の実態調査を行う必要があった。 そこで本研究では,2カ年度に渡る高齢者の生活特性および物的要素の利用実態に関する調査・分析を行い,また肢体不自由者に関しては長年にわたる古賀の一連の生活実態の観察にもとづいた研究成果を整理分析し,高齢者および肢体不自由者の分析結果から比較研究を進めた。 その結果,まず肢体不自由者を対象とした物的環境形成に考慮すべき要素としては,人間側の要素としての肢体不自由者,それを介助する介助者,機械・機器要素としての生活機器具・住宅設備機器と環境要素としての生活空間という4つの要素があり,これらの要素を有機的に統合することによって彼らに適した物的環境を形成するための方法となりうることが明らかになった。さらに高齢者に関しては,実態調査から得られた問題点と課題を整理すると,高齢化に伴う身体機能低下の諸特性が,肢体不自由者の障害特性,動作特性と同様な傾向があり,肢体不自由者を対象とした上述した4つの要素の有機的統合が,高齢者を対象とした物的環境を形成する方法としても最も有効かつ重要な方法として位置づけることができた。
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