1.はじめに 平成6年度の研究計画は、6月中旬から3カ月にわたる英国出張により、当初の予定が変更されたことから、研究目的の内容とともに平成7年度の研究計画の見直しを行った。 2.研究の経過 所属機関より英国建築の調査研究の為に出張する機会を得て、商業・業務等の流通施設、レジァセンター等の厚生施設および地域のコミュニティ施設、公共図書館および小・中学校等の社会教育施設に関する実態調査を試みた。日本では、東北地方の農山村地域における地域施設の実態調査を試みた。またこれまでに、東京都目黒区小中学校の実態調査、中部農山村地域における公共図書館の実態調査を行ってきた結果とも併せて考察した。さらに、英国建築の実態調査との比較に関する考察も試みた。 3.研究の評価 研究目的の内容と計画等の変更は単なる部分的な研究計画の作文を越えて、本研究の特徴である萌芽的研究の視点から考察することができた。その結果、次の事柄が新たに得られた知見として指摘することができた。 1)都市建築が住居と共に複合建築化して人車一体の有機的生活空間システムを展開。 2)公共の厚生・地域施設の民間運営は自発的に活性化、積極的運営システムを実現。 3)英国における小中学校は生徒の人体寸法に対応した建築空間化、相当空間量を実現。 施設の有機的運用は機能的合理性をもたらし、相当空間量の建築化は健康空間を生む事を英国建築の事例から観察された。 以上を総括し、生活空間の機能設計の観点から次の二面性と構造的諸問題を発見した。 1)生活文化を支える空間構造は教育と厚生を両端とする文化軸を構成する。 2)生活技術を支える空間構造は流通と地域を両端とする文明軸を構成する。 この二面性と諸問題は機能設計を試みる上での重要な指標を呈示すると考えられ、更に最適空間量は、定性的な空間機能と関連して定量化され相関的に成立すると思われる。
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