主に西洋の都市・集落を対象に集住形態の構成方法に関する文献・資料の収集を行った。また、ポルトガルの中世来の城郭都市・モンサラスにおいてフィールド・ワークを実施し、街区と住宅の関係について調査・研究を進めた。これまで行ってきた日本の場合についても、資料の補足と分析をさらに進めるとともに、アジア、とりわけ中国の都市に関する調査のための基礎的な情報を収集した。 モンサラスは中世からの形態をよく残した集落であり、小高い丘の上に築かれ、中軸になる道路が尾根上を走り、その両斜面に家並が形成され、周囲を城壁が取り囲んでいる。このような城郭都市はポルトガルにおいては典型的な事例と考えられてた。現地の調査では城壁内の建物配置、一街区の平面と街路沿いの立面を実測等によって採取した。現在、この調査にもとづいて集住方法の分析、考察を進めている。 ここで形成された住民形態の特徴としては街路に建物や塀が面し、連続する壁の景観によって、その内側に明確な街区がつくられていることである。各街区は建物で埋めつくされるものではなく、建物の背面側に庭を配する例が多い。そのため、街区全体の景観では樹木の繋った庭がモザイク状に点在することになる。このような集住形態の構成要素では庭を囲む塀の存在にあらためて注目できる。 今後は都市居住における塀の特性を明らかにすることを目的として、アジアの都市を対象に事例の調査・研究を行い、その上で、種々の居住形態に見られる構成方法の史的展開にふいて国際的な視野から比較検討したい。
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