都市や集落の居住形態は個別の住宅として営まれるだけでなく、それを集合化させるための方法を保有していると考えられる。また、住宅の集合化は、どこまでも延長されるのではなく、道路で囲まれた街区という集住形態の単位によって限定される。本研究は、住宅の諸相を国際的な視座からとらえるということで、日本、ヨーロッパ、アジアの都市・集落の中から具体例を取り上げ、住宅の集合化という要因をもとにした空間構成に関して検討を行った。その上で、街区という集住形態の構成原理を歴史性を踏まえて展望することを目的としている。 世界各地で形成されている都市や集落には、計画的な街区、あるいは長い時間をかけて一定の形態となった街区を容易に認めることができる。日本の事例としては、江戸の筋違橋御門内広小路を取り上げ、文献調査を行い、武家地と町人地の街区とその景観を史料によって比較した。ヨーロッパの事例では、ポルトガルの中世来の城郭都市、モンサラスを、アジアの事例では中国の県城であった、宛平城を取り上げて、それぞれでフィールド・ワークを行い、各街区の構成を分析した。 宅地を囲む建物の外壁や塀は、道路や隣地の境界になるだけでなく、宅地を連結させて、集住形態を組織化することになる。さらに、そのような壁や塀の特性が街路側だけでなく、街区内部に及んで街区の特質を成立させているのである。これらの街区の特質から集住形態の空間構成を図式化することで、空間構成の原理を抽出した。事例数が少ないため、本研究では集住形態における空間構成原理を体系化するまでには至らなかったが、宅地を囲む壁や塀を分析の指標にした研究方法は有効であると考えられた。
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