マルチメディア時代の到来を間近に控え、磁気記録技術の向上は必須である。 その中核技術である高性能薄膜磁気ヘッドの開発は、もはや不可欠の問題で、特に薄膜磁気ヘッドの性能に直接関わる磁性薄膜の解析及び機能制御は重要な課題である。 そこで本研究では、将来のキーデバイスとなる薄膜MRヘッドにおける交換結合界面のスピン配列及び現用薄膜インダクティブヘッドの再生波形歪みの理論解析を行った。 (1)まず高密度・磁気記録に不可欠となる薄膜MRヘッドを取り上げ、観測不可能な交換結合膜の膜厚方向のスピン配列をモンテカルロ・シミュレーションにより解析した。 その結果、スピンの平均的方向が膜厚方向に振動減衰すること、また、そのスピン配列が固着化することにより、この現象に定量的理解が図られるとする新知見・新解釈が与えられた。 (2)次いで、薄膜インダクティブヘッドの高密度記録を妨げていた固有再生波形歪みをシミュレーションにより解析した。 その結果、その原因は、薄膜インダクティブヘッド特有の問題であり、これを薄膜磁気コア両端部に低透磁率材料の層を付加することにより、急峻な磁束変化を緩和するという新しい方法の考察により解決した。 このように、薄膜磁気ヘッドに関する基礎的な理解はシミュレーションにより得られたが、実際の磁気コアについて未検討であり、その具体的観測が急がれる。
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