研究概要 |
核酸の分離・分析は,遺伝子工学の発展になくてはならないものである.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による核酸分離・分析は,ゲル電気泳動法に比べその迅速性や分離されたサンプルの回収操作の容易性から有用である.これまで逆相クロマトグラフィーによる合成核酸の分離の普及に比べ,天然DNA断片はゲルろ過クロマトグラフィーによる分離が試みられているものの,カラム自体の分離能は低くカラムを直列に数個つながることによりやっと分離が達成されるが,分離に莫大な時間を要する. 著者らは,これを克服するためにインターカレーターを用いた二重らせん核酸の精密分離法を考案した.ビスインターカレーターがDNA二重らせんに結合する際,連結部の長さによって適当なDNA長が要求される.もし,この長さよりもDNA二重らせんが短ければビスインターカレートは不可能になって,インターカレートするとしてもモノインターカレートする.言い換えれば,ビスインターカレーターが覆う領域(座位数)のDNA長を境にその結合能が大きく変化することを意味する.また,塩濃度の増加に伴ってインターカレーターの結合能は減少する.従って,このビスインターカレーターをHPLCの固定相に用いて塩濃度のグラジエントにより試料DNAの分離を行えは,インターカレーターの座位数のDNA長を境DNAの分離が可能となると期待される. 本研究では,これを実証するための検討を加えた.昨年度まで種々ビスインターカレーターを設計・合成したが,水溶性の低さのため実用に耐えうる化合物は得られなかった.今年度は,ビスインターカレーターのリンカー部にビオローゲンを導入することにより水溶性の高いビスアクリジンが得られた.これを用いて二本鎖DNA長12bpを境にした識別が達成された.この結果によりビスインターカレーターによるDNA精密分離の可能性を示すことができた.
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