光酸発生型高分子薄膜の露光表面をアルコキシシランの蒸気にさらすCVD法により、ポリシロキサン-有機高分子複合層を形成させる表面修飾法について、基礎的知見を得ことを目的として研究した。 1.高分子薄膜表面で形成されるポリシロキサン-有機高分子複合層の厚さ制御 ポリシロキサン-有機高分子複合層の厚さは、薄膜表面での酸発生に必要な紫外光が進入する深さで決まる。表面複合層の厚さ制御の方法として、光化学的に安定な紫外光吸収基をベースポリマーに導入すると、酸発生に必要な光のフィルム内部への進入距離が短くなり、ごく表面でポリシロキサン-有機高分子複合層が形成されることを明らかにした。また、光架橋型高分子を用いれば、露光表面から内部へのアルコキシシラン分子の拡散が抑制され、ポリシロキサン形成層は極表面に限定できることを明かにした。 2.光酸発生剤担持型と混合型の比較 本方法によるポリシロキサン-有機高分子の均質な複合層形成のためには、高分子薄膜中での光酸発生剤の均一な分布が必要である。高分子鎖に光酸発生剤を担持した種々の高分子を合成し、低分子の光酸発生剤を高分子マトリックス中に混合した場合とを比較した。露光表面でのポリシロキサン生成速度は、光酸発生剤担持型よりも光酸発生剤混合型のほうが大きいこと、またポリシロキサン生成速度の光酸発生剤濃度依存性は、光酸発生剤担持型のほうが大きいことを明かにした。
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