研究概要 |
Alに対するクワの性状特性を次の三つの視点から検討し、次の様な知見を得た。 (1)クワの下胚軸培養カルスをpH4.0,Al濃度を0.5ppm,4ppm,16ppm,32ppm区で34日間培養し,Alの阻害性をカルス形成率で検討した結果,Al濃度の増加とともに形成率の減少する傾向がみられ,Al32ppm区は著しい低下を示した。また,無菌実生培養の場合では,根長,茎長,葉数,根系重,茎葉重からのAlに対する阻害性の評価では,Al濃度に応じて何れも低下する傾向があらわれ,とくに,根系重が著しい低下をした。 (2)1/5,000ポット,Hoaglend1/2組成濃度でクワを水耕培養し,Al形態は単核態(Al^<3+>),硫酸態(AlSO_4^+),多核態(Al_<13>^<7+>)を,また,Alイオン濃度は(1)に準じ,30日間の生育状況とAl含有率を検討した。その結果,Alの32ppm区では地上部の生育がみられず,著しい阻害性が何れの区にもみられた。しかし,Al16ppm以下の濃度区では,対照区に比べて多核態区,硫酸態区の順に,地上部および地下部の伸長率の軽減がみられた。その傾向は低い濃度区ほど顕著になることが認められた。Al含有率では地上部に比べ,根系が著しく高い値を示し,樹体内のAl分布には著しい局在性のあることが明らかとなった。 (3)本学部クワ遺伝資源保存園の中から,任意に選んだ26品種の葉のAl含有率を検討した結果,ほとんどものが300ppm以下であり,Al集積植物ではない。土壌の理化学性とくに交換性AlとクワAl含有率との関連では,交換性Alの高い土壌に生育したもののAlの含有率が若干高くなる傾向がみられた。また,クワの部位別Al含有率は地上部では葉身が,しかも成熟葉が,地下部では繊根がそれぞれ高くなり,とくに組織別では栓皮が極めて高いことを認めた。クワの組織は,葉の落葉により,また,栓皮のコルク化および剥離の生理機構を有するので、その組織内に集積・局在するAlは樹体外に排除されることが示唆される。
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