研究概要 |
P-450HPcDNAを酵母発現ベクターpAAH5にクローニングし酵母内発現を試みたS.cerevisiae AH22では全く発現しなかった.そこでP-450HPのリーダー配列をAAAAAAに改変し,STR株での発現を試みた.培養した酵母からミクロソーム画分を調整し還元型CO-差スペクトルを測定したところ,わずかに450nmに吸収が認められた.しかし発現量(0.001nmol/mg以下)は極めて低く,活性測定などの酵素化学的解析はできなかった. 大量発現が気体できる大腸菌発現系をもちいてP-450HPの発現を試みた.WalidらはP-450_<7α>cDNAの発現に際して,N末端領域に存在する疎水性アミノ酸を欠失させることにより発現効率が高くなることを報告している.そこでP-450HPcDNAの5′側を3bp,42bpおよび102bp欠失させたdeletion mutantを作製し大腸菌内発現を試みた.培養菌体から膜画分および可溶性画分を調整し,還元型CO-差スペクトルを測定したところ450nmの吸収は全く認められなかった。アポ化している可能性が考えられるためヘムの前駆物質であるδ-アミノレブリン酸存在下で培養したが,同様の結果であった.またSDS-PAGEによる解析においても発現タンパクは検出されなかった. このようにP-450HPが酵母および大腸菌で発現効率が低いまたは全く発現しない理由としてADCIプロモーター活性が弱いこと,大腸菌および酵母の使用頻度のひくいコドンがP-450HPでは多いことが考えられるため,次年度はBaculovirus発現系を用いることを計画している. またヒトゲノムラブラリーよりP-450HPcDNAの5′側を100bpをプローブとしてP-450HP遺伝子をスクリーニングし,P-450HPの5′側上流れを含む8kbのDNAのクローニングに成功した.開始コドンATGの65bp上流にはTATAボックスが存在した.この領域を次年度さらに解析する予定である.
|