研究概要 |
研究経費のうち設備備品費相当額の交付が受けられなかったため、当初予定していた標品の検討から現有備品で調製が容易な標品についての検討を優先させた。蛾類の性フェロモン活性成分の典型であるtetradecenyl acetateの4種の位置異性体(Δ^3、Δ^4、Δ^5、Δ^6)を次の方法で調整した。 ◎Δ^3、Δ^4、Δ^5はアルキンカップリング反応を用いてtetradecyn-l-olの三重結合位置異性体を調整後,還元して二重結合位置異性体とし更にアセチル化した。 CH_3(CH_2)_m-X+HC≡C(CH_2)_nOH→CH_3(CH_2)_nOH→ CH_3(CH_2)_mCH=CH(CH_2)_nOH→Acetate (m+n=11:m=7〜9n=2〜4) ◎Δ^6はWittig反応により直線二重結合を導入後アセチル化した。 CH_3(CH_2)_4CHO+PPh_2-(CH_2)_6OH・Br→CH_2(CH_2)_4CH=CH(CH_2)_3OH→Acetate Δ^3とΔ^3及びΔ^4とΔ^6の二組の二成分系混合物について主に四重極質量分析系(Shimadzu QP-2000)を用いてマスクロマトグラフィーを行った。得られたマススペクトルグラムのスペクトルパターンの経時的変化を、各異性体のスペクトルパターンを基準にしてファジィ理論に基づいて既に提案しているファジィ分類法を適用し検討した。分類法の関数の補正によって二成分混合物の構成成分をΔ^3とΔ^5の混合物についてはマイナ-成分が10%、Δ^4とΔ^6の混合物について30%程度の割合であれば、GC上で単一ピークであっても、その構成成分を単離することなく同定に有力な情報が得られることがわかった。当初計画していたTetradecenyl acetateのΔ^<7P>、Δ^9、Δ^<11>の異性体については合成が最終段階であり、研究計画は着実に進行している。
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