主要な農業害虫の多くの性フェロモンは長鎖の不飽和化合物であるが、二重結合の位置については容易に情報が得られず構造決定の大きなネックになっている。研究代表者は化学修飾していない活性成分の位置異性体のマウススペクトルの主要なフラグメントの強度が異性体により特徴的であることを見いだした。フラグメンティション則に基づく特徴的なピークを探す方法では解析出来ない二重結合の位置異性体の同定をマススペクトルを全体的に見る方法、即ちパターン認識的手法によって解析し、単一成分では十分機能するファジィ分類法を提案した。この推定方法を発展させ、多成分系混合物の解析を行うこととし、実用的観点から、性フェロモン活性成分として数多くの昆虫で同定されているtetradecenyl acetateのΔ^7とΔ^9、Δ^7とΔ^<11>及びΔ^9とΔ^<11>異性体の混合物(1:10〜10:1の混合割合)のマスクロマトグラフィーを行った。得られたマウススペクトルグラムのスペクトルパターンの経時的変化を、ファジィ理論に基づいて既に提案しているファジィ分類法によって検討した。その結果tetradecenyl acetateの場合は、単一成分の識別でstandard parameterとして提案していた5対のフラグメント強度比(m/z 54/55、67/68、81/82、81/95、95/96)を補正して、6対のフラグメントの強度比(43/82、55/67、55/68、55/82、67/68、81/82)を採用することにより同様に二成分混合物の構成成分を推定が十分可能であることを明らかにした。
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