研究概要 |
主要な農学害虫の多くの性フェロモンは長鎖の不飽和化合物であるが二重結合の位置については容易に情報が得られず,構造決定の大きなネックになっている。研究代表者は化学修飾していない活性成分の位置異性体のマススペクトルを全体的に見る方法,即ちパターン認識的手法によって解析し,単一成分では十分機能するファジィ分類法を提案した。この推定方法を脅威させ,多成分系混合物の解析を行うこととし,初年度は標品調製の容易なTetradecenyl AcetateのΔ^3とΔ^5およびΔ^4とΔ^6の二組の二成分系混合物について,二年目は実用的観点から,鱗翅目類など数多くの農業害虫の性フェロモン活性成分として同定されている,tetradecenyl AcetateのΔ^7とΔ^9,Δ^7とΔ^<11>およびΔ^9とΔ^<11>異性体の混合物(1:10〜10:1の混合割合)について,主に四重極質量分析計(Shimadzu QP-2000)を用いてマスクロマトグラフィーを行なった。得られたマススペクトルグラムのスペクトルパターンの経時的変化を,各異性体のスペクトルパターンを基準にしてファジィ理論に基づいて既に提案しているファジィ分類法を適用して検討した結果,Δ^3とΔ^5の混合物についてはマイナ-成分が10%,Δ^4とΔ^6の混合物については30%の割合であれば,その構成成分を単離することなく同定に有力な情報が得られることがわかった。一方Δ^7とΔ^9,Δ^7とΔ^<11>およびΔ^9とΔ^<11>異性体のいずれの組合わせでも,マイナ-成分が30%程度の割合であれば,両構成成分とも同定に有力な情報が得られることが明らかとなった。
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