研究概要 |
コゲラの個体群を比較する資料を得るために、秩父・三宅島・沖縄・奄美大島などで捕獲を試み、捕獲した個体の各部の測定と捕獲場所の環境、そこでの行動の記録を行い、採血をした。捕獲個体はその地域に定着している確率の高いことが条件になり、捕獲適期である2月中旬〜6月にさらに資料収集につとめる。本研究においては、資料収集自体にきわめて大きな労力がかかる。 標本の測定結果と合わせ、現資料の得られたいずれの地域でも、本種には雌が大きいという性的二型があること、形態の地域変異(クライン)として南へいくほど小さくなる傾向があるが、日本列島の本土部と島嶼部では、翼長において異なるクラインが存在するらしいことなどが、形態の比較結果から確かめられつつある。これらは、本種の種分化、地理分布などを考察する上で参考になる事実である。 DNA多型の研究については、当初、海外での研究予算がとれれば分析に協力してもらう予定であったワシントン大学へは、予算がとれずまだ行けるまどが立たない。国際鳥学会議、食品総合研究所、森林総合研究所、北海道大学、インターネットなどにおける討議などを通じて、情報交換・収集をすすめ、現時点ではミトコンドリアDNAのDループおよびチトクロームb領域のシークエンシング結果による個体群の比較を1つの柱とすべきことが明らかになった。それだけでは不十分なこともわかり、5sRNA,MHC,アイソザイムなど比較すべき別の方法を検討中である。
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