研究概要 |
1.ノイズFFTインピーダンス測定法と等価回路モデル 本研究で構築したノイズFFTインピーダンス測定システムが農産物のβ分散領域のインピーダンス特性を十分測定でき、伝熱や水分移動等の動的現象の検出に有効であることを確認した。 農産物のインピーダンス特性はCole-Coleプロット上で二連の円弧で表されるβ_1とβ_2の分散として解析された。細胞膜に起因するβ_1分散は測定周波数100kHz以下で観察され、修正Haydenモデルにより精度よく説明できることを明らかにした。 以上の結果に基づき、農産物の物性と等価回路モデルとの対応関係の解明とインピーダンス計測による農産物の物性モニタリング方法の確立のために、以下の項目について検討した。 2.物質移動特性とインピーダンス特性との関係 ニンジン試料の乾燥過程において、含水率の減少に伴い修正Haydenモデル中の細胞外抵抗Raの値が直線的に増加し、その相関係数は0.972であった。これより、Ra値による水分推定が可能である。 3.熱移動特性とインピーダンス特性との関係 ジャガイモ試料の加熱過程において、約50℃以下では、細胞外抵抗Raと細胞内抵抗Rsの値による試料温度の推定が可能である。その温度以上では澱粉顆粒の糊化に伴う細胞内部から細胞外部への電解質の移動を表すRa,Rsの変化が観察され、インピーダンス測定は糊化の検出に利用できる。 4.物性モデル 上記の考察より、物性モデルの構築に際しては、細胞の内部と外部の特性から組織全体の物性を表すのが妥当と考えられる。 尚、本研究では、上記の物性の解析に絞り、計画書において予定していた粘弾性特性の検討を今後の課題として計画を変更した。
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