本研究はヤギの反芻行動の中枢制御の機序に外部環境と内部環境がどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。供試動物は第1胃フィステルを装着した成雌ヤギ4頭を用いた。実験室内は太陽光線を遮断し、蛍光灯により明暗の調節を行った。給餌と給水は、それぞれ自由摂取とした。ヤギは夜(暗環境)において、反芻行動を多くするが、夕方(暗環境直後)においては反芻行動の減少が確認された。また、ヤギの採食行動は反芻行動への抑制作用を示すが、給飼前は高い反芻行動を示した。しかし、その詳細は明らかでない、また、ヤギの反芻行動は明らかに光の周期によって、その日内変動は影響を受けている。反芻行動が夜及び暗環境下で反芻行動が多いことは反芻動物がかつて、夜行性動物であったことを示唆するものである。他方、ヤギの頸静脈内へ低級脂肪酸およびグルコースを注入することによって、反芻行動が減少の影響を受ける。その事は明らかに反芻行動がヤギ生体内の代謝産物によって、その反芻行動が影響を受ける事を示唆している。特に、低級脂肪酸は脳幹関門を通過できないので、低級脂肪酸による反芻中枢への作用は脳幹関門を通過できるケトン体を介した機序によるものと考えられる。このことは頸静脈内へのアセトン注入によって反芻行動が増加することからしても明らかであると考える。ヤギの反芻行動に対する外部環境(光および給飼)は反芻中枢の日内変動を形成している、および内部環境(低級脂肪酸注入)は反芻中枢への作用が抑制的な作用であることを示唆した。また、ヤギの第1胃内と頸静脈内への酢酸同時注入は1反芻当たりの反芻行動の抑制作用が示唆され。以上の結果から、特に低級脂肪酸は第1胃内の発酵に重要である1日当たりの反芻行動と1反芻当たりの反芻行動を制御している。このことは反芻行動を通して第1胃内の発酵を制御し、第1胃内における低級脂肪酸の生産調製が行われることを示唆している。
|