研究概要 |
本研究では体外成熟・受精・発生過程におけるブタ卵の成長因子(GF)およびそのレセプター(GF-R)遺伝子発現状況について逆転写-PCR法を用いて調べると共に多くのGFの作用発現にはGF-Rのチロシンキナーゼ活性が重要な役割を果たすことから、GF-Rチロシンキナーゼ阻害剤であるゲニステイン(Gns)およびハービマイシンA(HeA)がブタ卵丘-卵母細胞複合体(COC)の卵丘細胞層膨潤化および卵母細胞の核成熟に及ぼす影響について検討した・さらに、上記の検討結果をふまえて、体外成熟期間の延長がブタ体外成熟・体外受精卵の杯盤胞発育に及ぼす影響についても検討した。その結果、(1)EGF、bFGF、IDF-IおよびPDGF-A遺伝子発現は成熟から2細胞期までの各段階を通じて観察されたが,8〜16細胞期以後に検出されず、これらのGF遺伝子は母性由来であることが解った。一方,TGF-α遺伝子発現は発生過程においてのみ観察され、同遺伝子は胚性由来であることが判明した。(2)IGF-I-RおよびPDGF-Rα遺伝子発現は成熟、受精および発生の各段階を通じて観察されるが,EGF-RおよびbFGF-R遺伝子発現は受精過程で観察されなかった。(3)GnsあるいはHeA添加により,卵丘膨潤化および核成熟が有意に低下し,GFがブタCOCの卵丘細胞層膨潤化および卵母細胞の核成熟の進行に大変重要であることが解った。(4)体外成熟期間を36時間から42時間に延長することにより、ブタ体外成熟・体外受精卵の胚盤胞への発生率が著しく増加し、成熟過程におけるGFの卵母細胞内での蓄積が受精後の胚盤胞への発生に重要であることが示唆された。
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