伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)は未成熟Bリンパ球を主な標的細胞として感染・増殖し、ファブリキウス嚢の濾胞リンパ球の壊死を引き起こす。近年我が国で分離された高度病原性のIBDVはファブリキウス嚢の他に胸腺においても重度も病変を引き起こすことが知られている。そこで従来型強毒GBF-1株および高度病原性HPS-2株の実験感染ヒナにおける病変を比較検討して、胸腺病変の発病機序を調べた。組織学的にはHPS-2株感染ヒナの胸腺において、接種後2日から皮質リンパ球の胞体の縮小と核濃縮が認められた。その後、これらの細胞変化は進行して、リンパ球の減数が顕著となった。7日後には胸腺皮質の重度な萎縮がみられ、さらに髄質において偽好酸球とマクロファージの反応がみられた。GBF-1株接種ヒナでは、皮質リンパ球の減数が軽度に認められたが、皮質の萎縮は顕著ではなかった。電顕的にはHPS-2株接種ヒナにおいて皮質リンパ球は胞体の縮小と核クロマチンの半月状の凝縮示した。またマクロファージが崩壊したリンパ球を処理する所見が観察された。しかし皮質リンパ球においてはウイルスの増殖像はみられなかった。免疫組織学的にウイルス特異抗原は主に胸腺髄質に認められた。胸腺皮質リンパ球はウイルス感染によって誘発されたアポトーシスによって崩壊することが示唆された。これらの成果はAvian Diseases誌(1994年)および第116回日本獣医学会(1993年)に公表された。 HPS-2株感染ヒナのファブリキウス嚢病変はGBF-1株感染ヒナのそれに比べて重度で長期に亘って持続し、リンパ濾胞の再生が遅れることが解った。これらの成績は第117回日本獣医学会(1994年)に報告された。 IBDVのFK78株はIN24とLSCC-NP1細胞の二つマクロファージ系培養細胞において増殖し、さらに前単球性の未成熟な細胞性状を持つIN24細胞はFK78株に対して高い感受性を示した。これらの成績はJ.Vet.Med.Sci.誌(1992年)に公表された。
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