細胞内の超微形態を観察する方法の一つとして透過型電子顕微鏡(TEM)のための凍結レプリカ法があるが、レプリカ膜の厚みのために本来の微細形態を正確に捉えることはできない。本研究は超高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてレプリカ膜の裏面(フラクチャー面に対応するレプリカ面)を観察するものであるが、このレプリカ膜の裏面は構造物の鋳型であるので、微細構造の表面を忠実に反映したものと考えられ、これまでのTEMの像を上回る所見が得られることが期待された。本年度は、この超高分解能SEM試料作製法の確立を目指した。 レプリカ金属としてはこれまで用いられてきた白金カーボンよりもクロムのほうが粒状性の点で優れていることが明らかになった。しかし、クロムのみのレプリカではTEMで像のコントラストを得ることはできず、白金カーボンとクロムの二重蒸着をおこなってレプリカ膜を作製することによって、TEM像とSEM像の対比が可能となった。 SEM観察中のコンタミネーションの防止には加熱ステージを用いる方法が有効であるが、試料を300〜400℃に加熱しても、レプリカ試料そのものにはなんら影響がないことを確認した。 本年度は膜内粒子を中心に超高分解能レプリカSEM法の検討をおこなったが、得られた画像をスキャナーによってコンピューターに取り込み、膜内粒子の大きさを計測し、これまでのTEM像と今回のSEM像を検討した結果、これまでのTEMによる膜内粒子の像は蒸着の厚みによって10%程度ほど大きく計算されていることが明らかになった。 来年度は膜内粒子の真の形態に迫るとともに、ギャップ結合蛋白等の超高分解能レプリカSEM法による観察をおこないたい。
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