研究概要 |
1.平成6年度観察分に加え、外形正常ヒト胎芽(カ-ネギ-発生段階13-23、胎齢4-8週、頂殿長5.1-28.0mm)を用い、その連続光顕切片標本の観察と電顕による確認により、ヒト正常発生過程における細胞自滅のダイアグラムをおよそ確立した。このうち、十二指腸、空調近位部については特に詳細に観察し、細胞自滅の出現を確認した。また一部ヒト胎児標本の観察も行い、特に顎関節頭の発生過程に細胞自滅が関与することを示唆した。また対応する発生段階にあたるマウス胎児を同様に観察し、およそヒトに対応する部位、発生段階において相同の細胞自滅の所見が得られることを確認した。さらにマウス胎児において、bcl-2,bcl-X,等細胞死を調節する遺伝子の発現パターンを、免疫組織化学およびin situ hybridization等により検討し、予備的なデータを得た。 2.上記により観察した正常発生過程における細胞自滅の出現様式を、可及的に全身各部において再現しうる培養系の確立のため、単器官培養に限らず、より広範な培養法を試みた。すなわち、一つは子宮外発生法であり、これは妊娠中期以降の胚操作とその経時的観察を可能とし、実際上in vivoと同値と考えられ、細胞自滅の全身におけるパターンを解析するのに優れた方法である。この方法論の改善を試み、胎齢11日以降において好成績を得るにいたった。さらにより早期のものを含む胚へのより精密な操作やより連続的な観察等を可能とするため、心臓を含む体幹部のみを培養液中で培養する、体幹培養を試みている。今後、これらの培養系において種々の実験的操作により異常発生を誘発し、それに付随した細胞自滅の全身的パターンを解析することにより、細胞自滅の全身的調節とヒトの複合奇形への関与につき研究を進める。
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