研究概要 |
1.外形正常ヒト胎芽(カ-ネギ-発生段階13から23、胎齢4-8週、頂殿長5.1-28.0mm)を用い、その連続光顕切片標本の観察と電顕による確認により、ヒト正常発生過程における細胞自滅のダイアグラムをおよそ確立した。このうち、耳下腺および顎下腺の原基、網膜、下顎正中部、前正中胸壁、生殖洞と中腎管との移行部等、これまでヒトで方向されていない多くの部位に細胞自滅を確認したほか、十二指腸、空腸近位部については特に詳細に観察し、器官の発生・文化との関係につき考察した。ヒト胎児標本の観察も行い、特に顎関節頭の発生過程に細胞自滅が関与することを示唆した。疫学的データとの比較検討により、上記全身の細胞自滅のパターンとヒト複合奇形の合併のパターンとの関連の可能性を示唆した。さらにマウス胎児を同様に観察し、ヒトに対応する部位、発生段階においてほぼ相同の細胞自滅の所見が得られることを確認した。さらにマウス胎児において、bcl-2, bcl-X,等細胞死を調節する遺伝子の発現パターンを、免疫組織化学およびin situ hybridization等により検討し、予備的なデータを得た。 2.上記により観察した正常発生過程における細胞自滅の出現様式を、可及的に全身各部において再現しうるマウス培養系の確立のため、単器官培養より広範な培養法として子宮外発生法の導入・改善を行い、胎齢11日以降において好成績を得るにいたった。これにより妊娠中期以降の胚操作とその経時的観察が可能となり、各種実験的操作後の細胞自滅の全身におけるパターンを解析できる。さらにより早期のものを含む胚へのより精密な操作やより連続的な観察等を可能とするため、心臓を含む体幹部のみを培養液中で培養する体幹培養を試み、現在各種条件を検討中である。今後、これらの培養系を用い解析することにより、細胞自滅の全身的調節とヒトの複合奇形への関与につき研究の進展が期待される。
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