研究概要 |
マウス胚性腫瘍細胞株F9をレチノイン酸で分化誘導する系を用いて、レチノイン酸によって発現が誘導される遺伝子の中から次の2つについて解析を進めた。 1)Rae-12:subtractive hybridization法により単離したRae-12 cDNAをもとに14-3-3タンパク質のβ,ζ,η,τ及びε鎖各アイソフォームをコードするcDNAをクローン化し、構造解析するとともに、レチノイン酸によるF9細胞の分化誘導にともなって、これらのアイソフォームの遺伝子の発現が誘導されることをmRNA及びタンパク質のレベルで明らかにした。これらの遺伝子は成体マウスでは、脳、精巣、卵巣、胸線及び脾臓において主に発現しているだけでなく、胚性幹細胞においても発現していることがわかった。そこで、これらの遺伝子の機能を明らかにする目的で、遺伝学的手法により哺乳動物のRaf-1キナーゼの活性化を検出できるようにした出芽酵母を用いて、これらのアイソフォームがRaf-1の活性化に関与していることを証明するとともに、β鎖の高発現はNIH3T3細胞をがん化させるが、一方F9細胞に対しては増殖を抑制することを明らかにした。 Rae-28:Rae-28 cDNAは構造解析の結果ショウジョウバエのホメオティック複合体の発現を制御していると考えられているポリホメオティックタンパク質と有為な相同性を示すタンパク質をコードしていた。そこで、遺伝子構造の解析を行い、rae-28遺伝子は全長22kbに渡る単一遺伝子であり、15個のエキソンから構成されていることを明らかにした。次に、以上の解析結果に基づき、rae-28遺伝子の機能を個体レベルで解析するために、相同遺伝子組換えを利用してノックアウトマウスの作製を行った。プロモーターを持たないネオマイシン耐性遺伝子をエキソン4にin frameに挿入するとともに、エキソン5及び6を含んだ5kbの領域を欠失させたターゲティングベクターを作製した。同ベクターを1×10^8個のES細胞に導入後、出現した80個のネオマイシン耐性クローンについてサザンブロット法で解析し、8個の相同組換え体を得た。これらのESクローンを用いてキメラマウスを作製した後、複数のヘテロ接合体を確立し、現在これらを交配中である。
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