研究概要 |
マウス胚性腫瘍細胞株F9をレチノイン酸で分化誘導する系を用いて、レチノイン酸によって発現が誘導される遺伝子群を単離し、これらの中から次の2つの遺伝子について解析を進めた。 1)rae12 : rae12遺伝子群が14-3-3タンパク質のβ,ζ,η,τ及びε鎖各アイソフォームをコードすることを示し、レチノイン酸によるF9細胞の分化誘導にともなって、これらのアイソフォームの遺伝子の発現が誘導されることをmRNA及びタンパク質のレベルで明らかにした。遺伝学的手法により哺乳動物のRaf-1キナーゼの活性化を検出できるようにした分裂酵母を用いて、これらのアイソフォームがRaf-1の活性化に関与していることを証明するとともに、β鎖の高発現はNIH3T3細胞をがん化させること及びこれらのアイソフォームの発現誘導がMAPキナーゼカスケイドの活性化を介してF9細胞の分化誘導に重要な役割を果たしていることを示した。 2)rae28:ショウジョウバエのポリホメオティック遺伝のマウス相同遺伝子と考えられるrae28遺伝子について、構造解析を行うとともに、rae28遺伝子の機能を個体レベルで解析するために、相同遺伝子組換えを利用してノックアウトマウスの作製を行った。ヘテロ接合体同士を交配して調べた結果、ホモ接合体は出生直後にチアノ-ゼを呈して、致死となることが明らかとなった。解剖学的検索の結果、ホモ接合体には(1)心奇形、(2)肺胞の拡張不全、(3)口蓋裂、(4)目の形成不全、(4)骨格の異常が認められた。これらの解析結果から、rae28遺伝子が生存に必須であるだけでなく、心臓、目、さらに骨格の形成において重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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