消化管内分泌細胞腫瘍の発生と進展の分子病理学的解析

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06807016
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 岩渕 三哉 新潟大学, 医療技術短期大学部, 教授 (70143766)
• 研究分担者: 渡辺 英伸 新潟大学, 医学部, 教授 (70037381)
• キーワード: 内分泌細胞腫瘍 / カルチノイド腫瘍 / 内分泌細胞癌 / 消化管ホルモン / セロトニン / 分子病理

研究概要

ヒト消化管に発生する内分泌細胞腫瘍群、すなわち、生物学的に低悪性度のカルチノイド腫瘍と高悪性度の内分泌細胞癌とを対象とし、外科的切除および生検材料から得られた前者220個と後者51個および継代移植の内分泌細胞癌株6種(ヒト食道、胃、直腸原発)とを用いて、両腫瘍の発生、増殖、進展の特性を病理学的および分子病理学的に解析し、以下の知見を得た。
「組織発生」カルチノイド腫瘍は幼若内分泌細胞に由来することを示した。胃と直腸の早期内分泌細胞癌20個を解析し、その組織発生経路として、(1)通常型分化型腺癌および腺管絨毛腺腫、(2)多分化能幹細胞、(3)カルチノイド腫瘍、(4)幼若内分泌細胞が想定されることを示し、高頻度の経路は(1)であり、特に、粘膜内分化型腺癌深層部に発生した腫瘍性内分泌細胞クローンの選択的増殖により形成される内分泌細胞癌が最も多いことを明らかにした。
「生産物質」本腫瘍群において術前・術後の病態把握を消化管ホルモン測定により行うには、(1)腫瘍群を組織学的に、好銀性カルチノイド腫瘍、銀親和性カルチノイド腫瘍、内分泌細胞癌の3群に亜分類すること、(2)好銀性カルチノイド腫瘍では発生部位別に特徴的なペプチドホルモンを、銀親和性カルチノイド腫瘍ではセロトニンを、内分泌細胞癌では既知ホルモン陰性例が多いがセロトニン検索を第一選択にすること、を明らかにした。
「培養株」ヒト内分泌細胞癌株6種がセロトニン、ペプチドYY,腸グルカゴン、カルシトニン産生という母腫瘍の機能的特性を良く保持していることを明らかにした。さらに、7種類の抗癌剤を用いた感受性試験により、食道内分泌細胞癌由来株にはVincristinとMitomycin Cが有効であったが、他の株では有意な効果は得られないことを示した。

研究成果

• [文献書誌] 岩渕三哉,西倉健: "胃と大腸の早期内分泌細胞症:その特徴と発生" 消化管内視鏡. 7. 275-284 (1995)
• [文献書誌] Iwafrchi M,Watanabe H.: "Argentaffin carcimoicl tumors of the rectum" Acta Medica et Biologica. 42. 79-86 (1994)
• [文献書誌] 岩渕三哉: "癌早期診断のup to date-胃癌と再生上皮" MEDICO. 25. 37-40 (1994)
• [文献書誌] 須田武保,岩渕三哉: "脳,皮膚および縦腫に転移した直腸Sm内分泌細胞癌の例" 胃と腸. 29. 1302-1306 (1994)
• [文献書誌] 八木一芳,岩渕三哉: "透明キャップを用いた内視鏡的胃粘膜切除術(EMRC)の経験" Endoscopic Forum for digestiue disease. 10. 181-186 (1994)
• [文献書誌] 古川浩一,岩渕三哉: "特異な内視鏡像を呈し術前深達度診断に苦慮したBoirmannl型胃癌の1例" 胃と腸. 29. 1176-1180 (1994)
• [文献書誌] 岩渕三哉: "カラーアトラス臨床内分泌病理診断学(分担)" 医歯薬出版, 352 (1994)
• [文献書誌] 岩渕三哉: "消化管の癌の画像診断(分担)" 秀潤社, 222 (1994)