研究概要 |
ヒト消化管に発生する内分泌細胞腫瘍群、すなわち、生物学的に低悪性度のカルチノイド腫瘍と高悪性度の内分泌細胞癌とを対象とし、外科的切除および生検材料から得られた前者220個と後者51個および継代移植の内分泌細胞癌株6種(ヒト食道、胃、直腸原発)とを用いて、両腫瘍の発生と進展の特性を病理学的および分子病理学的に解析し、以下の知見を得た。 「組織発生」カルチノイド腫瘍は幼若内分泌細胞に由来することを示した。早期内分泌細胞癌20個を解析し、その組織発生経路として、(1)通常型分化型腺癌および腺管絨毛腺腫、(2)多分化能幹細胞、(3)カルチノイド腫瘍、(4)幼若内分泌細胞が想定されることを示し、高頻度の経路は(1)であり、特に、粘膜内分化型腺癌深層部に発生した腫瘍性内分泌細胞クローンの選択的増殖により形成される内分泌細胞癌が最も多いことを明らかにした。 「産生物質」本腫瘍群の術前・術後の病態把握を消化管ホルモン測定により行うには、(1)組織分類を導入すること、(2)銀親和性カルチノイド腫瘍はセロトニン、好銀性カルチノイド腫瘍は部位別に特徴的なペプチド、内分泌細胞癌はセロトニンを第一選択とすることを明らかにし、その検索手順を示した。 「遺伝子」免疫組織化学的に、(1)カルチノイド腫瘍はKi-67陽性細胞低頻度、p53陰性であること、(2)内分泌細胞癌はKi-67陽性細胞高頻度、p53陽性48%であり、p53とKi-67免疫活性は分化腫瘍細胞(クロモグラニン保有細胞)では減少や消失すること明らかにした。 「培養株」ヒト内分泌細胞癌株6種が母腫瘍にみられたセロトニン、ペプチドYY,陽グルカゴン、カルシトニン産生能を良く保持していること、抗癌剤感受性試験により、食道内分泌細胞癌由来株にはVincristinとMitomycin Cが有効であることを示した。
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