【目的】血管炎発症におけるCD4^+T細胞の意義を明らかにするため、血管炎惹起性のマウスCD4^+T細胞ラインおよびハイブリドーマクローンを樹立した。【方法】Lewisラットの胸部大動脈中膜から樹立た血管平滑筋細胞株をMRL-lpr/lprマウスに免疫し、血管平滑筋細胞特異的CD4^+T細胞ライン(MV1)を樹立し、その性状および細胞移入による血管炎誘発性について検討した。さらにMV1とマウスT細胞腫(BW1100)との細胞融合についてT細胞ハイブリドーマクローン(D6.F2)を樹立し同様の検討をした。【結果】(1)MV1は抗原特異的に活性化された時、CD4依存性増殖を示すだけでなく種々のサイトカインを産生し、共存するFas陽性マウス標的細胞を殺した。(2)MV1は抗原特異的活性化の後、サイクロンフォスファミド前処置同系マウスの腹腔内に移入されると、選択的に肺の小動脈周囲に血管壁構造の破壊を伴う炎症性細胞浸潤を惹起した。(3)D6.F2もまた抗原特異的活性化に際しIL-2産生および細胞障害性を示し、かつ、サイクロフォスファミド前処置MRL;-lpr/lprマウスへの移入に際し選択的に肺の小動脈周囲炎を惹起した。【考察】MV1およびD6.F2は、血管炎惹起能を有する血管平滑筋特異的な細胞障害性CD4^+T細胞であることが明らかとなった。誘発された血管炎が肺に現局した理由は不明であるが、投与経路が静脈内でなかったことから単に解剖学的理由ではなく、肺血管の細胞障害感受性やMRLマウスの遺伝的背景が関与していることが推定された。【結語】血管平滑筋細胞特異的CD4^+T細胞ラインおよびハイブリドーマクローン(MV1/D6.F2)による血管炎は、抗原特異的T細胞株の受身移入による初めての血管炎発症モデルであり、肺血管炎pulmonary vasculitis の発症機序の解明および新たな治療法の開発に有用である。
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