研究概要 |
BioCell Tracer systemを用いて深在性の糸状菌感染症原因菌として重要なAspergillus fumigatusの単一菌糸の成長速度および形態変化を指標として抗真菌剤の試験法を検討した.抗真菌剤はamphotericin B (AMPH),flucytosine (5-FC),micronazole (MCZ)及びfluconazole (FLCZ)を使用し,これら抗真菌剤の単剤または2剤併用下での効果の変化を確認しながらA.fumigatusの菌糸に対する効果的な抗真菌剤療法の情報を得た.培養セルは(35x10mm)シャーレ底面を,滅菌poly-L-lysineでコーテイングして用いた.患者分離株のA.fumigatusをpotato dextrose agar slantで30℃,72時間培養後,分生子を集め洗浄したものを接種菌とした.培養セル中心部に分生子10^3個接種し,基質に接着した分生子をsynthetic amino acid medium,fungal (SAAMF)培地で覆い30℃で24時間静置培養,基質に接着している菌糸の成長速度を測定し,成長速度がゼロ付近まで降下した場合を効果有りと判定した.測定時には培養セル内のSAAMF培地を取り除き,第一の薬剤が含まれているSAAMF培地と置換し,所定時間培養後に、さらに第一と第二の薬剤が含まれるSAAMF培地と再置換し観察を続けた.その結果,AMPH (2μg/ml)と5-FC (250μg/ml)は単剤の作用では効果が認められなかったが,同一濃度の2剤を併用した場合は菌糸の成長速度の阻止及び形態変化を認めた.この薬剤の組み合わせではまず5-FCを作用させ,後にAMPHを作用させた方が良好な効果を示した.次に,AMPHとMCZの併用は拮抗作用の報告が多いが,我々の実験系では併用効果を認めた.また,MCZとFLCZの併用はCandida albicansでは効果的との報告であるが,我々の得た結果では明らかではなかった.故に,本法は糸状菌の感受性試験法として有意義であることが示唆された.
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