世界各国から得たヒト由来39菌株について病原性プラスミドを検索したところ、馬由来の強毒株と同じ85kbの病原性プラスミドを保有する株と、20kDa抗原を発現し、マウスに中等度の毒力を示す4種類の類似したプラスミドを保有する株、およびこれらの毒力マーカーを発現せず、マウスに対しても病原性を示さない弱毒株の存在が明らかとなった。 20kDa抗原を発現する中等度毒力株には病原性関連プラスミドが存在し、AIDS患者由来株A5株のプラスミドについて制限酵素地図を作製した。この過程で、ヒト由来株と馬由来の病原性関連プラスミドが制限酵素切断パターンで容易に区別できることも明らかとなった。次に20kDa抗原を特異的に認識するモノクローナル抗体の作製を試みた。これまでのSDS-PAGEで分離されたバンドを免疫する方法から、KSCNを用いた分離方法に変更したところ、この抗原は粗精製ではあるが免疫応答が極めて高く、その結果多数の20kDa抗原認識ハイブリドーマが作製された。モノクローナル抗体を用いてコロニーブロット法などの簡易同定法も開発された。次に、20kDa抗原発現株の免疫不全マウスに対する病原性試験は現在進行中で、興味ある知見が得られつつある。それは、20kDa抗原を発現する中等度の強毒株ではヌードマウスを死亡させるが、病原性プラスミドが脱落した弱毒株では容易にヌードマウスから菌がクリアランスする事である。ヌードマウスはヒト本症の治療実験モデルの可能性も示唆され、今後さらに詳細な検討を加えたい。
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