ヒトの感染症由来39菌株の病原性について検討したところ、AIDS患者由来の7株とNon-AIDS由来1株が15-17kDa抗原を発現し、85kbの病原性プラスミドを保有する強毒株であった。残りの31株中19菌株に潜在プラスミドを保有する株が認められ、菌体抗原の解析を行ったところ、新たに15-17kDa抗原と移動度が異なる20kDaの位置にバンドが認められる株を15株認めた。マウス50%致死量は強毒株のそれより約10倍低いため、20kDa抗原発現株は中等度毒力株と名付けた。20kDa抗原発現株の大きなプラスミドを複数の制限酵素を用いてプラスミドDNAの切断像を比較検討したところ、79kb、87kb、95kb及び100kbの4種類の大きさの異なるプラスミドであることが明らかとなった。15-17kDa抗原遺伝子をプローブとして、ヒトAIDS患者由来株(No.5)のプラスミドDNAのEcoRI切断片のサザンハイブリダイゼーションを行い、弱いながらハイブリダイズする断片を同定した。これをクローニングし、塩基配列を決定したところ、576塩基192アミノ酸残基のオープンリーディングフレームの存在を認めた。15-17kDA抗原遺伝子と比較するとDNAレベルでは79%の相同性が、アミノ酸レベルでは75%が一致した。私たちはと畜場で採取した豚の下顎リンパ節1832検体から本菌の分離を行い、56検体(3.1%)から本菌を分離した。分離株の毒力関連抗原を検索したところ殆ど(93.9%)が20kDa抗原発現株であった。20kDa抗原発現株のプラスミドプロファイルから全ての株が大きなプラスミドをひとつ保有することが明らかとなり、制限酵素切断像から豚の20kDa抗原発現株のプラスミドは少なくとも9種類存在することが明らかとなった。 以上の成績からヒトへの感染源として強毒株は馬、中等度毒力株は豚が強く示唆された。しかし、具体的な感染経路は殆ど分かっておらず、今後の重要な検討課題となった。
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