単細胞性藍色細菌Synechococcus sp PCC 7942の生物時計を分子遺伝学的に解析するために、以下の研究を行った。 1.冷却CCDカメラで寒天培地上の各コロニーの生物発光を測定し、各コロニーの生物発光リズムを測定することに成功した。コロニーの示すリズムは液体培養のリズムよりも波型がきれいで、再現性にも優れていた。 2.コロニーの生物発光リズムを自動測定するために、冷却CCDカメラにプレート自動交換装置を装着し、カメラの作動やプレートの交換、発光シグナルデータの収集解析をコンピューターで制御し、測定装置を自動化した。 3.ルシフェラーゼ遺伝子をゲノムに組み込んだSynechococcusトランスジェーニック発光株を化学変異源EMSで処理し、コロニー発光自動連続測定装置で選別して多種多様な(周期の長いものや短いもの、無周期、波型の乱れたものなど)40種類以上のリズムの突然変異体を分離した。 4.野生型ゲノムDNAライブラリーをこれらの突然変異体に遺伝子移入し、遺伝的に相補することにより、相補遺伝子(時計遺伝子)をクローニングした。現在、20種類の変異体がライブラリーで相補され、5つの相補体SP22、p30、p38、p48、LP60からそれぞれ相補遺伝子を大腸菌にプラスミドとして回収した。これらのプラスミドをそれぞれ変異体に再移入し、プラスミドに相補遺伝子が乗っていることを確認した。DNAブロット解析と塩基配列の解析から、我々は既に少なくとも3個の異なる時計遺伝子を得ていることが分かった。現在これらの遺伝子の解析を進めている。
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