研究概要 |
【目的】健康管理や社会生活の状況が地域で生活を営む高齢者の健康に及ぼす影響を検討する。 【対象と方法】大阪府S市において平成4年10月の一次調査で健康管理、支障度、社会生活の状況などが把握できた65歳以上の高齢者1,405人を観察コホートとして、平成7年11月30日までの38か月間の転帰を観察した。この観察コホートの中で転出した者80人を除く、1,325人(94.3%)の転帰が確認され、死亡した者は154人、生存の者は1,171人であった。 【結果と考察】カプラン・マイヤー法を用いて健康管理の状況別に生存率をみると、健康診断を「60歳未満で受診」していた者の生存率は93.7%で最も高く、ついで「60歳から受診」の者の90.8%、「受診せず」の者の78.6%の順であった。基本健康診査・がん検診の受診状況別には、「両方とも受診」していた者の生存率は95.4%であり、「一方のみ受診」の者、「いずれも受診せず」の者はそれぞれ90.7%、86.1%であった。健康づくりの実施状況別には、「60歳未満で実施」していた者は95.2%で最も高く、ついで「60歳から実施」の者が91.6%、「実施せず」の者が86.6%であった。コックス比例ハザードモデルを用いて健康管理の状況が生存に及ぼす効果を検討すると、性(男)、年齢(75歳以上)、支障度、社会活動(なし)、生きがい(とくにない)などの死亡と有意に関連する要因の影響を除いても、健康診断の受診と健康づくりの実施はいずれも死亡と有意な負の関連をみとめ、ハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ0.65(0.52-0.81)、0.67(0.51-0.88)であった。基本健康診査を軸とする健康診査の受診や健康づくりの実践は、高齢者の死亡を抑制する可能性を示しており、地域で実践されている保健予防活動が高齢者のアクティブ・ライフの保持・増進に寄与するものと考えられる。
|