初めに、地域別紫外線(UV-B)量と疾病死因別死亡リスクの間の生態学的関連を評価する目的で、わが国の過去30年間にわたる地域別地上到達UV-B量を推定した。UV-B量は、独自に導き出した推定式に基づき、全国気象観測地点における全天日射量、オゾン全量の経年的データと観測地点の緯度および暦月により算出した。推定式の妥当性は、UV-B量の推定値および実測値を比較することで評価可能であるが、推定値を全国4地点における1991年以降の実測値と比較する限りにおいて、近似性は高いと判断された。全国の地域別推定UV-B量に関する1990年単年平均および1961年以降の期間別通年平均は、地点緯度に対しておよそ同順位を示したが、地点により±10%以上の期間別通年平均の変動、または、±10位以上の順位変動を示した。次に、疾病死因別死亡リスクとの間の生態学的関連についてはUV-B量の年代別推定値と1983-87年における全癌・白血病・肺癌の地域別男女別標準化死亡比(SMR)の間の相関を評価した。その結果、全癌では男女とも1960年代のUV-B推定値と有意の弱い負の相関(防御的関係)、また白血病では男女とも1960年代のUV-B推定値と有意の弱い正の相関(有害関係)を示した。ただし、評価地点や年度の違いに関わらずこの関係が維持されたのは、UV-B推定値と女性の全癌の間の関係のみであった。また、UV-B推定値とSMRの間に認められた相関は、地点緯度とSMRの間の相関よりも高値、かつ、有意性も高い傾向を認めたことから、従来指摘されているような疾患罹患や死亡に関する地域格差の一因として、地域のUV-B量が影響している可能性が示唆された。本研究は、評価地点の選択の問題を考慮しつつ、UV-B量と他の疾病死因死亡リスクとの関連、あるいは他に地域差を認める疾病指標との間の関連の評価について展開を図る計画である。
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