研究概要 |
慢性腎不全はいったんその病態が確立されるとそれは不可逆性で,程度の差はあれ進行性の経過をとることが知られ,最終的には腎機能の廃絶に至る。この進行性の経過をとる機序については未だに完全には解明されていないが,そのほとんどが糸球体障害によることが指摘されている。先に糸球体障害で見られるメサンギウム細胞の増殖を抑制し,さらにクレアチニン(Cr)酸化状態,すなわちCrからのcreatol, methylguanidine(MG)産生をblockする知見が緑茶タンニンで得られているので,本年度は非炎症性の腎不全モデルとして糸球体障害の発症,進展の機序を解明するうえで重要なモデルとされている腎摘ラットを用い,臨床応用のための基礎研究を行った。その結果,腎摘ラットでは血清尿素窒素(BUN),Crの増加,クレアチニンクレアランス(Ccr)の低下,尿蛋白の増加をきたしていたが,緑茶タンニン投与群ではこれらパラメータがいずれも改善し,腎不全の進行を抑制する知見が得られた。これら所見は組織学的にも確認され,糸球体硬化の軽減をきたしていた。また腎実質を部分切除した場合,残存腎ではラジカル消去酵素活性の低下をきたしていたが,緑茶タンニンがこれら酸化的ストレス状態にある腎を是正する作用も有していることが示された。
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