研究概要 |
Helicobacter pylori(H.pylori)感染は慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌などの多彩な消化器病疾患に関与していることが認められている。本研究はH.pylori感染に対する病態の違いを宿主側に求め、宿主の免疫遺伝学的違いを検討することを目的とした。H.pylori感染の有無に分け、HLA-DQ,DP,DRの各遺伝子の対立遺伝子頻度を検討し、これらの遺伝子のハプロタイプについて検討した。HLA-DQ,DP,DRの各遺伝子の対立遺伝子型はそれぞれの遺伝子の多型部位をpolymerase chain reaction(PCR)により増幅し、PCR産物の種々の制限酵素で切断しrestriction fragment length polymorphisms(RFLPs)を解析し、各対立遺伝子型特有のRFLPsパターンによりタイピングするPCR-RFLP法で行った。クラスIIHLAであるHLA-DQAのタイピングとH.pylori感染との関係を検討したところ、H.pylori感染陽性例において萎縮性胃炎群、十二指腸潰瘍群ともにHLA-DQAの対立遺伝子DQA^*0301の頻度がH.pylori感染陰性健常者群より高く、H.pylori感染陰性群において、DQA^*0101の対立遺伝子頻度がH.pylori感染陽性十二指腸潰瘍群、H.pylori感染陽性萎縮性胃炎群に比べ高かった。また、対立遺伝子DQA^*0301の頻度がH.pylori感染陽性萎縮性胃炎群でH.pylori感染陽性十二指腸潰瘍群に比べ有意に高かった。これらの結果はH.pylori感染の病態において、宿主側の免疫遺伝学的背景因子が関与していると考えられ、対立遺伝子DQA1^*0301がH.pylori感染に対し易感染性に作用し、DQA1^*0101がH.pylori感染に対し抵抗性に作用することが示唆され、さらに、DQA1^*0301がH.pylori感染陽性萎縮性胃炎と十二指腸潰瘍との病態の違いに関与していることが考えられた。
|