研究概要 |
大腸癌細胞株colo201において見い出した3.5kbの異常転写産物について、Colo201のcDNAライブラリーを作製し、これをc-kit cDNA断片をプローブを用いてスクリーニングを行ない、18の陽性クローンを解析して一次構造を決定した。その結果、本転写産物はc-kitキナーゼドメインのC末端側約1/2のみをコードしており、5'端はイントロン15に一致していた。エクソン16の上流75bpよりORFと考えられ、alternative promoterによる転写であることが推察された。ORFの5'上流にはいくつかの転写制御エレメントに一致する配列(CCAAT,GATA,TRF,TGGCA)が見い出された。本転写産物が蛋白レベルでも発現していることを調べるために、c-kit C末端に対するポリクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーを行った。その結果、permeabilizedの条件下で、Colo201細胞に明らかな反応性を認めた。またウェスタンブロット法でも25kDの位置にバンドを検出しえた。以上の結果から、Colo201細胞においては、何らかの理由でalternative promoter活性が高まり、C端の一部に相当する産物が生じていると考えられた。 本遺伝子の作用を明らかにする目的で、NIH 3T3細胞にトランスフェクションを行ないstable transfectomaを作製したが、細胞増殖に対する明らかな影響は認められなかった。現在、c-kitを過剰発現している細胞株に対する影響を検討中である。
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