研究概要 |
Cu,Zn superoxide dismutase (SOD)の濃度を免疫酵素抗体法(ELISA法)を用いて血清,脳脊髄液及び線維芽細胞にて検討した.SOD濃度は血清及び脳脊髄液ではアルツハイマー病患者と年齢を一致させた健常対照者との間に有意な差は認められなかった.線維芽細胞による検討では,SOD濃度は65歳以上のアルツハイマー型老年痴呆患者で有意に減少していた.また,Northern blot 解析を用いたSODのmRNAの検討では,SOD濃度の検討と同様に65歳以上のアルツハイマー型老年痴呆患者で有意に減少していた.これらのことから,アルツハイマー型老年痴呆の病勢の進行や原因にSODが関与している可能性が考えられた. GTP結合蛋白(G蛋白)のexon 8におけるPCR法を組み合わせたsingle-strand conformation polymorphism(SSCP)解析では,一部のアルツハイマー型老年痴呆患者において,SSCPに異常が認められ,G蛋白のexon 8において遺伝子異常が存在する可能性が示唆された.現在,直接塩基配列決定法による遺伝子異常の確認を行っている.また,ミトコンドリア遺伝子の検討では,数例にミトコンドリア遺伝子の点変異が認められており,アルツハイマー型老年痴呆におけるSODの異常に伴ってoxidative stressによるミトコンドリア遺伝子異常とミトコンドリア機能異常が存在する可能性が示唆された.
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