研究概要 |
本年度は、昨年確保した米国Whitaker社のヒトAB型血清を用いて,主要な食餌性蛋白抗原に対するライン化細胞樹立を試みる予定であったが,必ずしも培養抗原濃度が適切とは言い難く,また,インキュベータ-やハヴェスターの条件設定に手間取り,十分な成果をあげることができなかった。しかし,各種抗原すなわち,卵白アルブミン(OVA),牛血清アルブミン(BSA),κ-カゼイン(k-C),牛ガンマグロブリン(BGG)に対する細胞性免疫のスクリーニング法として,それぞれ50および100μg/mlの濃度で7日間培養するシステムで十分であることを確認し得た。これまでは,0から100までの濃度について少なくとも24wellを各抗原について設定する必要があったことを考えると,より簡便でより多くの検体を取り扱うことが可能になり,実験成果を得るに際して2-3倍のスピードアップが望めるようになった。また,96穴同時処理のハ-ヴェスターの条件設定も完了した。これで,ライン化細胞樹立や抗原特異的反応細胞存在率をモニターするシステムへ向けた来年度以後のプロジェクトの設定準備がほぼ終了した。 多発性硬化症患者については、蛋白抗原の反応性との関連の詳細な検討を進めるために引き続きHLAタイピングを行った。上記4抗原に対する多発性硬化症患者の細胞性免疫状態は,OVAに対しては42%の,BSAに対しては14%とこれまでの試験研究段階での結果とほぼ同様であるが,k-Cに50%の患者で陽性を示すという意外な結果が得られた。しかも,再燃期に検討する機会の得られた患者では,上記4抗原のすべてに対しリンパ球の幼若化反応が陽性に出た。すなわち,腸管免疫/食餌性蛋白に対する免疫状態は,生体側の条件により変動しており,この要因を考慮して経口トレランンス導入を計画すべきであることが明らかにされた。
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