研究概要 |
2年間の本研究では,食餌性蛋白に対する培養システムを確立し,なるべく簡易で再現性のあるスクリーニング法を用いることで,多発性硬化症(MS)や重症筋無力症(MG)患者の腸管免疫能の指標とすること,さらにはその7日間の培養において,各々の蛋白抗原に反応して増大するリンパ球分画をモノクローナル抗体を用いて同定するよう試みた。 1)食餌性蛋白に対する免疫反応のスクリーニングのために選択した4種の抗原蛋白即ち,卵白アルブミン(OVA),牛血清アルブミン(BSA),K-カゼイン(K-C),牛ガンマグロブリン(BGG)について,反応至遍濃度を最終的に決定した。各抗原毎に6種の抗原濃度を設定する手間を省略し,50と100μg/mlの濃度における増殖反応を測定するのみで十分であることを確認し,複数の検体の同時処理が可能となった。末梢血リンパ球を上記の抗原蛋白濃度で7日間培養後,^3H-4ミジン取り込みで測定した増殖反応では,OVAとBGGに対する反応は,MSのみならずMGおよび健常人対照群でも少なからず認められた。対照的に,BSAに対しては後二者の群では例外なく無反応であった。K-Cに対する高応答性については,MSの腸管免疫能(正常の経口免疫寛容維持機構)の障害の指標となる可能性が判明した。 2)フローサイトメトリーによる培養前後のリンパ球分画解析を行なった結果,^3H-チミジンによる増殖反応と明らかな相関の認められた培養後増大する集団はCD4^+CD26^+のメトリーヘルパーT細胞であった。 3)ハーバード大学との共同研究で,HLH抗原を用いてのヒトにおける経口免疫寛容誘導の指標としては,抗原特異的反応性前駆細胞存在率をモニターする方法が最も優れていることを明らかにした。 4)次年度以後にサイトカイン測定をするべく,7日間培養後の上清を採取し,-70℃で保存した。
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