研究概要 |
本年度は神経疾患を有さない対照剖検例について脊髄、後根神経節、交感神経節、神経根、末梢神経、筋肉を中心に一部の例では一般臓器、肝、腎、脾、消化管、睾丸、心筋などを加えて、神経栄養因子(NGF,BDNF,NT-3,GDNF)とその受容体(low-affinity NGF receptor,trkA,trkB,trkC)の発現を定量的RT-PCRとNothern blot分析によりmRNAのレベルでの分析を行った。またGDNF mRNAについては筋萎縮性側索硬化症(ALS)についてその発現レベルを検討した。対照正常例における発現分布は個々のneurotrophic factorにより極めて異なっておりNGF,BDNF,trkA,trkBは神経系に限局して発現しており、NT-3およびtrkCは一般臓器を含めたより広範な発現が見られた。またGDNFは筋肉と脊髄に高い発現が見られた。一方、ALSではGDNFの発現は脊髄では著明に上昇しており筋肉では明らかな減少が見られた。今後更にALS以外の神経疾患での検討、病理組織所見との対応、発現が見られる細胞のcell lineageの同定などの検討が必要である。
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