以前の検討から、尿中落下尿細管の培養系で少なくとも近位尿細管由来細胞とヘンレの太い上行脚由来細胞の2種類が明らかにclonal cultureるという事実を確認していたため、これらの細胞とまず、各種の尿細管機能異常疾患の患児の尿で培養可能かどうかを検討した。その結果、かなりの種類の疾患患児より尿細管細胞の培養を確立しえた。具体的にはまず、遠位型尿細管性アシドーシスの患児数名、Hartnup病患児、シスチノ-シス患児、ミトコンドリア脳筋症による腎不全患児等より、上記の両細胞系をclonalに培養し得、最終的には細胞を凍結保存することが可能だった。一方、これらの検討の中で、腎性尿崩症等の尿浸透圧が低下している疾患の患児尿より培養を確立することが極めて困難であことも明らかとなった。次に、培養された尿細管細胞の機能を検討するため、両培養細胞系をsubcultureの時点でfiltermembrane上に移し、confluetになった段階で、経上皮抵抗を測定した。すると、近位尿細菅由来細胞にくらべヘンレの太い上行脚由来細胞のほうが径上皮抵抗が著しく高く、生理的機能に一致した性質を保持していることが示唆された。またいずれの細胞系も、基底側に加えられた生理的濃度の副甲状腺ホルモンにより細胞よりAMPを遊離し、生体内での場合と同様に、近位尿細菅のほうがより多くの産生能を有していた。細胞のtransformについては数度試み、2種類のtransformantを確立しえたが、現在までのところ、満足できる程度の生理的性質を有しているとは考えにくいため、今後もさらに検討して行く予定である。
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